「瀬戸口廉也を語る」
瀬戸口廉也が手掛けた作品に
影響を受けた方々からの寄稿企画
三宅麻理恵
それは、ANIPLEX.EXE.さんのブランド発足時のこと。
プロデューサーである島田さんにインタビューをさせていただいた際、
一人の瀬戸口廉也ファンとして、真剣に訴えた事を覚えています。
それから二年後に突然「ヒラヒラヒヒル」が発表されたときには雷に打たれたような衝撃と感激で涙を流しました。
また瀬戸口廉也さんのシナリオを読める喜び…。生きててよかった…。
そこまで強く感じるのは、私が瀬戸口廉也さんのファンになったのが、彼が引退されていた時期だったからというのも一つの要因かもしれません。
「SWAN SONG」
私の心に深く突き刺さっている大切なゲームです。
クリスマスイブに大地震が起こり日常が一変する地方都市のお話なのですが、
状況の悲惨さや、避難場所での人との衝突やままならない残酷な展開があるのに続きが気になって読み進めてしまう。
自分ではどうにもできない状況や環境に、無力感と絶望感で世の中の理不尽さを感じました。
それなのに読み進めてしまう文章力が瀬戸口さんの魅力の一つだと思います。
神様って何だろう。神様っているのかな。
くり返し、瀬戸口さんの作品で考えるようになる事柄です。
いつの間にか、この作品を書いている瀬戸口さんはどう捉えているのだろう、と考えるようになって、作品と共にご本人のファンになっていきました。
そして、「キラ☆キラ」
女装をした主人公がパンクロックバンドを組むというお話。
私はプレイした当時大人だったので、このゲームをもっと早く知っていたら
学生時代バンドに参加できたのにと思うほどに、羨ましいほど眩しく熱いゲームです。
ボロボロのワゴンで仲間と全国、まわりたかったなぁ。
いわゆる個別ルートに入る前に、濃密にみんなで仲良く青春を味わえて
このまま浸っていたいと感じられる展開に改めて瀬戸口さんの魅力を感じました。
しかし、瀬戸口さんは引退されていて、新たな瀬戸口さんの文章に触れられない。
失意のどん底のまま数年が過ぎ、2017年以降に突然発表されたシナリオ・瀬戸口廉也の作品群。
絶望と無力感のなかに一筋の希望の光と希望がさしこんで、まさに瀬戸口さんの作品でいつも体験している事です。
私にとっての神様は瀬戸口さんなのかもしれません。
「MUSICUS!」では改めて、攻略できるキャラクターだけでなく男性キャラクターや主人公を取り巻くキャラクターの魅力を感じられ、この作品では「キラ☆キラ」以上に主人公達の年代でこの作品をプレイしていたらどう感じたんだろうと個人的に考えさせられました。
久しぶりの、私にとっては初めてのリアルタイムで触れる瀬戸口廉也作品。
一クリックで表示される文章量と一台詞が長めなのも魅力です。
初めて読んだときは圧倒されてしまったのですがこの行数がたまらない。
トラウマになりそうな程どうしようもなく辛いのに愛おしいEDがある作品です。
まだまだ作品と共に瀬戸口さんの事を語っていきたくなりますが、全てを話すのも無粋になってしまいますね。
最後にお伝えしたいのは、瀬戸口さんの作品はどれも心を抉る苦しみを感じるのに愛おしいということ。
まずは「ヒラヒラヒヒル」の体験版でその片鱗に触れていただきたいです。
あっという間に文章の虜になり、瀬戸口廉也さんの紡ぐ物語に目が離せなくなる事でしょう。
共に暗闇の中で一筋の光を探しにいきましょう。
三宅麻理恵
声優
三宅麻理恵 6/7生まれ 大阪府出身 ラクーンドッグ所属。
声優、配信番組パーソナリティなどで活躍中。
主な出演作品に『アイドルマスターシンデレラガールズ』安部菜々役、
『銀の匙 Silver Spoon』御影アキ役、『魔王城でおやすみ』グロウウィスプ役、
『ウマ娘 プリティーダービー』マーベラスサンデー役などがある。
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